
夏にふさわしく怪談をひとつ。
その日は3人とも特に用事もなかったので、
そのまま近所の公園でダンスの練習をすることにしたそうです。
公園では、近くの中学校の女バスと思われる集団が既におり、
部活動の練習に勤しんでいたわけですが、
邪魔にならない端っこの方で、彼らは練習を開始しました。
しばらくすると、女子中学生の方から朗らかに
「何やってるんですか?」
と質問を投げかけてきたので、彼らも笑顔で
「僕ら大学のダンスサークルで、ダンスの練習してるんですよ」
と、役柄に合わせた応答を繰り広げてみたそうです。
すると彼女達は、「ダンスならうちらもできますよ♪」
と言って、体育祭か何かで練習したと思われるロックソーラン的なものを、とびっきりの笑顔で披露してくれました。
彼らも「うわすげえ!」と、
ケータイで写真を撮りながらはしゃいで鑑賞しました。
ここまではいい感じでした。
しかしここからが悪夢の始まりでした。
まず彼女達は自分らがひとしきり踊り終わると、
「今度はあんたたち踊んなさいよ」と、
無理な要求をふっかけてきました。
踊るも何も、彼らはダンスサークルでもなければ、
踊りもついさっき練習し始めたばかりなのです。
「とりあえずすぐには無理だから、1時間練習させてもらえる?」
リュウがそう提案し、向こうもそれを承諾しました。
1時間後。
全く踊れるようになっていない3人。
「いや、無理だなこれ。 …逃げるか?」
そう言ったと同時に全速力でダッシュするリュウ。
あとを追うツバサ。
スーツケースとギターを担ぎ、必死についていくアッちゃん。
しばらく走って逃げた後、
そんな自分達がちょっと面白くて笑い合い、
何の気なしに後ろを振り返ると、
先程まで無邪気にバスケの練習をしていたあの子達が、
冗談など微塵も通用しなそうな、
鬼の形相で追いかけてくるではありませんか。
「は!?ふざけんなよ!!おめーら死ねよ!!」
汚い言葉を止めどなく排出しながら、
怒涛の猛追を展開する彼女たち。
そのあまりの真剣さに命の危険を感じた彼らは、逃げました。
必死で逃げました。
逃げて、団地の駐車場にとめてあった車の後ろに身を潜めました。
「おいどこだよ!!出て来いよ!!」
刻一刻と迫りくる鬼の包囲網。
炸裂する連携プレイ。
「いたし!!」
ついに発見され、一瞬で囲まれ、睨まれ、
その芸術的なまでのフォーメーションは、
まさに日頃の練習の賜物だなと、感心するほどでした。
「お前らマジキモいんだよ!」
「すいません」
「何逃げてんだよ!」
「すいません」
「さっき撮った写真消せよ!」
「はい、消します。はい、消しました」
「笑ってんじゃねーよ!」
「すいません」
「うちの兄ちゃん高校生だから、今から呼び出してボコしてもらうかんな!」
「すいません、勘弁して下さい」
「あ、先生だ。先生〜!この人達マジキモいんです!!」
「あのすいません!マジで勘弁してください!!!」
そんなやり取りを繰り返しつつ、何度も謝り倒し、
ようやく解放された彼ら。
アッちゃんとリュウは面白過ぎる状況に終始半笑いでしたが、
ツバサはマジ凹みだったそうです。
「あんないい子達が、あんな風になるなんて。。」
「いや凹みすぎでしょ完全に!笑」
「ていうかさ、一番キレてんのが一番ブスだったよね」
「そうっすよね!そうっすよね!笑」
モテない三人組は、こうした実践を経て、
その役柄を固めていったのでした。
俳優を目指している方は是非参考にして欲しいと思います。
ちなみにアッちゃんはその後も何度かうちに泊まりに来ましたが、
駅を出るたびに中学生を警戒しているのには笑いました。
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