2009/02/26

ベルリン【4】



【2月12日午後】
昼食後、現代美術館へ。
いきなりシャベルが吊り下がっていたり、
シカがケーキみたいになっていたりした。

というか入場料がタダだったあたりに波を感じた。
木曜はそういう日らしい。ラッキ。

面白いのも面白くないのも
よくわからないのもよくわからなくて面白いのもあった。

女子は着替えたりなんだりで遅れて美術館に来たので、
僕と龍は先に全て見終えて街へ繰り出した。

夕方から上映の日本映画『無防備』を見るために。

『無防備』は昨年のPFFグランプリ作品で、ということはつまり
森岡龍監督の『つつましき生活』が負けた作品ということになる。

見終わって思ったのは、まだ見てはいないけど、
たぶんこっちの方が愛はむきだしだろうなということ。
自主映画でもなければあそこまでむき出せません。

さて、上映が終わってラウンジのパーティへ直行。
予想通りの空気だった。

英語、酒、話しかけられるのは女子とか監督ばかり、
こんな時、僕らのコミュニケーションツールと言えば、
全裸でプールに飛び込むか、変な踊りを踊るかである。

しかしどうやらそんな雰囲気でもない。
ふと辺りを見渡すと、部屋のすみの方に僕らと同じ匂いを放つ
モテなそうな男子が二人いた。

一人はヒゲに長髪で汚いセーター。早稲田の左翼に多いタイプ。
もう一人は完全に角刈り。シャツはもちろんジーンズにインだ。
うまくいってない方のインだ。

どうやら韓国の若者らしい。
すぐに仲良くなった。

「何の映画に関わっているの?」
「いや、何にも。お酒がタダだから来たんだ」
「え?」
「ベルリンで映画の勉強をしてるんだ」
「え、今いくつ?」
「32歳」
「いつからここにいるの?」
「もう10年ぐらいかな」
「なんじゃそら。でもベルリンいいよね」
「いや今だけだよ。映画祭が終わればもう、グレーだよグレー」
「ははは」
「東京はどこから来たの?」
「龍は渋谷に住んでるよ」
「Shibuyaー!ナイスプレイスー!!」
「あの子達も皆『そらそい』って映画の女優さんだよ」
「おー、ビューティフルガールー!!」

みたいな感じで結構盛り上がった。
彼らの英語のしゃべり方がまた面白くて、
その後もしばらく真似をするのが内輪で流行した。

そして左翼っぽい人のセーターは若干臭かった。
親近感とはセーターの臭いから湧いたりするものである。

それからは監督方や女の子達が混ぜてくれたのもあり、
色んな人と話すことができた。

なかでも、スウェーデン人の青年とロイ・アンダーソンの話で盛り上がったのは嬉しかった。

パーティ後、夕食を食べて、
元気な女子はクラブでズンドコしに行った。

しかし僕と龍とオースミさんの3人は、
コンペの会場へと乗り込んでいった。

中に入って何もかもに驚いた。
規模が、規模が違う。

客席はなんと3階席まであり、
ステージの上にはなんかセットが組んであって、
外からレッドカーペットをゲストが通ってくるのを生中継。

映画はアンゲロプロスというギリシャの巨匠の新作で
この日がワールドプレミアということもあり会場は熱気だっていた。

なんか飲みにいこう。
と言って一回にあるカフェ的な所まで移動しようとしたその階段で、

「ヴェンダース!!!!!!」

森岡龍が奇声をあげた。
目の前にヴェンダースが立っている。
奥さんも一緒だ。
本物だ。

「アイラブユー!!!!」

森岡龍がヴェンダースに抱きつく。
僕も便乗して「うわああああ」とか言いながら抱きついた。

今思えば射殺されてもおかしくない状況だ。

僕らが1月まで撮っていた映画は実はロードムーヴィーで、それもヴェンダースの『さすらい』を観てああいうのやりたいと思い撮り始めたようなものだったので、この状況はとにかく発狂に値した。

「やばいやばいこれやばい」
余韻に浸って階段から軽く落ちたりしていたら
一部始終を観ていた周りの人がちょっと笑ってくれた。

たけしがカンヌで会えて喜んでいたヴェンダースに遭遇。
やっぱドイツだからな。アンゲロプロスだしな。
いるんだな。
にしても驚いた。

そして映画が始まる。
アンゲロプロスもキャストと共に登場。

なんと真横を通った。
と思ったら龍が手を差し出し握手。
したり顔。

しかし上映開始3分ぐらいで爆睡。
どこまでも調子のいい男である。

たしかに字幕がドイツ語の時点でかなりキツかった。
しかもアンゲロプロスと言えば3時間の映画をたった47カットで撮ったりと鬼のような長回しで知られている監督と認識していたので、内容わからずともそこは楽しめるかと思っていたが、いきなり結構普通にカット割ったりしててそこもビックリした。

しかしまあ、コンペの会場の壮大さを知れたことと
ヴェンダースとアンゲロプロスを一気に生で見れたというそれだけでも十五分に満足である。

後半どんどん映画マニアみたいになってしまったが、
今回のこの興奮ばかりはわかる人にだけわかる感じで許して頂きたい。
とにかく、やばかったです。

映画ってあんなにパワーあるんだなと思いました。
儀式ですよあれはもう。
そりゃナチスも利用しますよ。

写真は、ベルリンを歩く三木さんの後ろ姿。
シルエットがモチ君のようでかわいいし、
色が目立つので迷子になりかけた時は何度も助けられました。

2枚目は件の「ロールキャベツじゃなくてロール肉」。
赤いのはビートという芋的なもの。うまい。

3枚目が現代美術館のシカ。

4枚目が、女子がクラブで出会ったという男性。
額に『M』と書けば完全にスポポビッチです。
とすればカノはビーデルです。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

お~い!久し振りだなー
おぼえてる??小学校の時金沢先生FOEVERという名曲をともに作ったハッチだよ~

つい最近このブログを発見したんで嬉しくなってコメントしちゃった(笑)

Tokushi Suzuki さんのコメント...

おー!!!はっち!!!!!!!

WOバランス!TUM!!一分前!!!

久しぶりだね〜
コメントありがとね〜